<7年が過ぎて…>
しばらくブログからご無沙汰していた。何もなかったのではなく、むしろあまりにいろいろあり過ぎたというのが本当のところである。この間に心理的、そして距離的にも極めて身近にいた老年と若年の二人の大切な存在が消えた。忙しいことは麻薬みたいなものだ。たたみ掛けるようなルーティンの流れの中に身を置いていると圧倒的な喪失感と直面していることをしばし忘れさせる。もの想いにふけるような時間を物理的に排除することは有効な対処であったように思う。しかし、ある程度時間が経った今頃になって唐突に体の中心から重いボディブローのように深い喪失感がこみ上げてくることがある。これは制御不能であり、その喪失感はこれまで経験したことのないような孤独感を伴っている。そんなとき、自分が見知らぬ海原を羅針盤もない船にのって漂っている、そんな不安感を覚える。
もう古い話になるが、Windows XPのサポート終了というMac派の自分は正直あまり気にもしていなかったことで大いなる代償を支払った。電カルが新しいWindows OS(8だが)で動くよう更新しなくてはいけないというのは、“まあ仕方ねえな”と何となく納得はしていた。しかし、それに連動して画像データベース(PACS)、生理検査(心電図)データベース、おまけに検査機器といった広範なシステムまでが同時に更新が必要となるとは認識していなかった。実のところ、これら付随した機器の更新が電カルという本丸の更新よりも莫大な費用を必要とした。想定をはるかに越えた膨大なデータに、OSに対応するためのバーションアップでは事足りずシステム自体の新規購入にならざるを得なかったからである。加えて、度重なるMDCTの管球交換、解析ワークステーションの更新と想定内なるも予定外の多大な出費も重なり、まさに泣きっ面に蜂であった。高度な診療レベルを維持するということは、それなりに費用もかかるものだと今さらながらに認識した次第である。
当クリニックも開院以来すでに7年が経過した(これを書いている日が7年目最後の日)。これを機会にクリニックの外装クリーンアップも実施し気分一新して8年目を迎えようとしている。本当に幸いなことに、開院以来の有能なスタッフがほとんど変わらずにサポートを続けてくれている。冠動脈CT造影の症例数はもうすぐ5000例の大台に達する。この症例数に裏付けされた小山放射線技師の再構築画像はさらに洗練されたものになっている。超音波検査では多領域での知識と経験を踏まえた加藤超音波技師の描き出す画像の貢献は特筆すべきものがあり、循環器系以外の重篤疾患が偶発的に指摘されることが稀ではない。さらには画像読影の杉山医師の経験を踏まえた緻密で洞察力のある画像診断は肺野や腹部臓器などの異常や疾患を的確に指摘してくれる。当院の画像診断は相当なレベルにあると自負している。また、主な血液検査を院内検査で実施し結果を当日の診療に反映する体制、外来診療あるいは循環器疾患に精通した看護師の存在、医療クラークによる電カル入力、そしてInbodyを駆使した栄養指導など、開院以来の専門クリニックとしての高次元な循環器診療はスタッフ全員の協力で確実に受け継がれている。
7年が過ぎてさすがに要領が良くなってきそうなものだが、いまだに自分は日々時間に追われている。この時間のなさに時々愚痴を言うようになってきている自分が情けない。8年目を迎えるに当たり、もう一度あのSteve Jobsの言葉を肝に銘じたいと思う。
The only way to be truly satisfied is to do what you believe is great work.
H28年7月