<平成25年年始ご挨拶>
いよいよ2013年が始まりました。
当院が開院してすでに3年半ばになろうとしています、ほんとうに早いものです。開院からのまさに手探りの診療は、さすがにおちつきを見せてきていると言ってよいと思います。しかし、この“おちつき”というのは、一面ある危険性も孕んでいると考えています。
診療のルーチンが確立するということは、効率的にプロセスが進んでいくという意味では大きな進歩です。しかし、繰り返されるルーチンは思考の膠着をもたらすかもしれません、それも意識されることなく。それを避けるには、停滞に甘んじることは衰退であるという認識を持つことが大切です。各々のスタッフが向上心を持ち続け、つねに新しい挑戦に意識を向け、互いに刺激し合うことが大きな鍵となります。その意味で、すべてのスタッフにとって仕事が受け身的で義務的な労働ではなく、創造的で自己啓発的な生き甲斐であるような、そういう雰囲気が息づいているクリニックでありたいと願っています。当院は本年も立ち止まることなく、診療の質のさらなる向上を追い求めていきたいと考えています。
当院は、開院以来循環器疾患と生活習慣病の専門クリニックとして、その診断を自己完結的に遂行する独自の診療を展開してきました。中心的疾患である冠動脈疾患については、MDCTによる冠動脈造影はすでに2000例に達しており、近郊の病院でカテーテルインターベンション、あるいはCABG手術の治療を受けた症例は相当数に上ります。また、末梢動脈や頸動脈などの閉塞性動脈硬化症につきましても、血管超音波検査そしてCT血管造影で高度病変が確認され外科的治療を受ける例は増加を続けています。
このように有意病変を指摘し侵襲的(外科的)治療により深刻なイベントを未然に回避することはもちろん必須なタスクですが、そのような病態にまで至らないよう予防することができればそれに越したことはなく、それもまた当院の重要な役割となっています。生活習慣病を背景とする動脈硬化のリスク評価と心血管系疾患の定量的・画像的評価に基づいた適切な予防医療(生活改善、内科治療)を導入し、さらにその効果を経時的に検証することで病態の進行を確実に食い止めることが本質的に求められる医療のはずですが、この当たり前なことが思っている以上に難しいことも事実です。
こうした予防医療は一生続く長期戦です。ご本人が健康について真剣に考え、理解し、そして行動出来るか、そこが重大なポイントとなってきます。男性では6割、女性でも4割が先行する自覚症状などまったくなく、ある日突然急性心筋梗塞、あるいはそれによる突然死を発症している事実からも、無症状であることは何の安心材料にもなりません。今は何ともないから症状が出てから治療は考慮しようという考え方は、多くの場合致命的に手遅れとなります。当院は、真剣に病状と向き合う患者さんを、科学的にサポートすることで危険なイベントを出来うる限り回避し、いつまでも健康的な生活を送ってもらいたいと思っています。
平成25年1月