急性心筋梗塞
急性心筋梗塞は冠動脈が閉塞することで心筋への血液供給が途絶えて発症する死亡リスクの高い危険な疾患です。“死を予感する”と表現される冷汗をともなった重篤感のある胸痛が突然現れ持続します。吐き気や意識消失をともなうこともあります。狭心症の特効薬である亜硝酸剤は効果がありません。
このよう症状が出現したらためらうことなく直ちに119番して下さい(Fig. 1)。
心筋梗塞の発症は動脈硬化性プラークが次第に増大して閉塞に至るという連続性の事象ではなくあるとき突然閉塞するという非連続な事象です。心筋梗塞の原因となった病変を調べると7割近くは狭窄度が50%未満の“軽度”な病変から発症していて70%を越す“高度”な病変から発症しているのは2割にも満たない少数でした(Fig. 2)。
そのため心筋梗塞症例の多くが発症の瞬間までなにも症状がなく急性心筋梗塞あるいはそれによる突然死が最初の症状となってしまいます。心筋梗塞に至る病変はコレステロール成分に富みかつ薄い内膜で被われている“不安定プラーク”でできています(Fig. 3)。
その薄い内膜が破れ(プラーク破綻)そこに血栓が形成され瞬く間に閉塞することで心筋梗塞は発症します(Fig. 4)。不安定プラークは冠動脈CT造影で確認することができます。心筋梗塞を予防するには不安定プラークを適切な内科治療で安定化させプラーク破綻を来さないようにすることが必要です。とくに悪玉LDLコレステロールを可及的低値(少なくとも<70mg/dl)に維持することが重要です。狭心症の治療法であるカテーテルによる血管形成術(PCI)は不安定プラークを安定化させる治療ではないので心筋梗塞を予防することはできません。しかし、心筋梗塞を発症してしまったら閉塞部を速やかに再開通させ心筋壊死を最小限に留めるため迅速なPCIが必要となります。
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