下肢静脈瘤・血栓性静脈炎
重力に反して血液を心臓に戻す下肢の静脈には、頭側へ向けての一方向弁があります。静脈は周りの筋肉が収縮することで押しつぶされ、その際にこの弁があるために血液は頭側へ(心臓へ向かって)流れます(fig. 17)。下肢の静脈は表在静脈と深部静脈に分かれています。鼡径部において表在静脈の大伏在静脈は深部静脈である大腿静脈に流入します。この流入部にある弁が継続的な立ち仕事や妊娠を契機に機能障害を生じると表在の大伏在静脈へ向かって深部の大腿静脈から血液が逆流するようになり、結果的に大伏在静脈は拡張していきます。そうなると、この拡張した大伏在静脈に流入する下腿の表在静脈血の流れも損なわれるため次第に静脈圧が上昇し静脈血管が瘤状に拡張するという経過をとります(fig. 17-2)。
妊娠を経た女性や長時間立位で働くような仕事に従事している方に現れやすい病態です。
静脈瘤は静脈が青く浮き出る程度で無症状な場合から、下腿や足首がむくむようになり下肢の重だるさを感じるようになり、さらには皮膚炎を来たして色素沈着や重症例では潰瘍を来すこともあります。また、静脈血管内で血液が停滞することで血栓が形成され静脈と周囲に炎症をおこしたものが血栓性静脈炎で、痛みを伴い静脈に沿って発赤、腫張が現れます。
治療は軽症の場合は長時間の座位、立位を避け、弾力ストッキングを着用することで静脈瘤の進行を抑えます。有症状の静脈瘤に対しては拡張した大伏在静脈をレーザーで閉鎖させる外科的治療が保険適応となっています。なお、当院では静脈瘤の診断は行いますが、治療は行っておりません(必要な場合はしかるべき施設の血管外科へご紹介します)。
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