MDCT
当院では循環器診療を専門とする施設として開院当初よりクリニックレベルでは例を見ない冠動脈造影が可能な高性能MDCTを設置しています。初代のGE社製 LightSpeed VCTは新しい年号を迎えた令和1年5月にGE社製 Revolution EVO EXに更新されました(Fig. 1)。
VCTでは稼働した10年間で約6000例にのぼる冠動脈造影が実施されました。その豊富な経験から培った冠動脈疾患の画像診断は多方面から高い評価を受けています。
更新されたRevolutionは新たな逐次近似法による画像再構成でより高分解度の画像が得られるばかりでなく低被ばく、低侵襲(造影剤量低減)といった安全面でも大きな進歩を遂げています。性能が向上したハードウェアと解析ソフトウェアによりさらに精度の高い画像診断を提供しています(Fig. 2)。
冠動脈疾患の領域においてはパラダイムシフトが起きています。致命的な心筋梗塞の発症と関連するのは動脈硬化がもたらす血管狭窄の程度(量)ではなくプラーク自体の不安定さ(質)が関係していることがわかってきました。
従来のカテーテル血管造影は冠動脈内腔の狭窄度(量)を評価するためのゴールドスタンダードですが血管壁のプラークを描出することはできずその質を評価することはできません。CTによる血管造影では血管内腔の狭窄度だけでなく動脈硬化により血管壁に沈着したプラーク(アテローマ)を視覚化することが出来ます(Fig. 3)。このようにCT造影では心筋梗塞発症の直接的な原因となる “プラーク破綻”をきたしやすい “不安定プラーク”を確認することができます。プラークの質的な評価を行うことで虚血イベントの危険性を判断しそれに基づいて適切な治療を選択することができます。
もちろんCT血管造影は冠動脈だけでなく閉塞性動脈硬化症診断のための下肢動脈造影(Fig. 4)、腎血管性高血圧診断のための腎動脈造影、脳血管障害診断のための頸動脈から頭蓋内血管の造影(Fig. 5)など多様な血管造影にも対応しています。
その他、低被爆での一般的な単純CT検査の他、内臓脂肪の定量評価、造影剤を用いない冠動脈硬化の定性評価であるカルシウムスコア測定なども行われます。